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zoom RSS 大マゼラン雲までの距離〜宇宙戦艦ヤマトが旅する世界

<<   作成日時 : 2012/02/20 23:51   >>

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【付記】
大マゼラン雲までの距離については、Nature2013年3月7日号に、49.97±1.13キロパーセク(16万2900±3700光年)という値が報告されています。この値については、ネイチャーの記事の中で、大マゼラン雲までの距離の最近の研究が、2001年に発表されたハッブル宇宙望遠鏡キープロジェクトの値(16万3400±7500光年)
を意識する傾向があると指摘しています。また、2013年秋に欧州宇宙機関(ESA)が打ち上げを計画している探査機Gaiaが、大マゼラン雲までの距離を年周視差により直接測定することを目指していることを紹介しています。
 
■関連記事
 アストロアーツ天文ニュース2013年3月
  「食連星で精度が向上した大マゼラン雲までの距離」
  http://www.astroarts.co.jp/news/2013/03/13lmc/index-j.shtml
 ネイチャーダイジェスト2013年6月号 Volume 10 Issue 6
  「”最も近い銀河”までの正確な距離」
  http://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/toc/10/6
 欧州宇宙機関 ガイア探査機
  http://www.esa.int/Our_Activities/Space_Science/Gaia

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 「宇宙戦艦ヤマト」のリメイク版「宇宙戦艦ヤマト2199」が今年(2012年)4月7日から順次上映される。キャラクターやメカニックなど、オリジナルからはかなりアレンジされているようで、不安半分、楽しみ半分という感じだが、同様に、初回放映から今日までに明らかになった宇宙の姿がどのように反映されているかについても興味をそそられる。一昨年(2011年)12月に公開された実写版「SPACE BATTLESHIPヤマト」では、映像こそハッブル宇宙望遠鏡の画像を彷彿とさせる鮮明で美しいものだったが、単発劇場版なだけに時間も短く、物足りない感じだった。

 中でも残念だったのは、イスカンダルまでの距離を初代と同様、14万8千光年としていたところ。この「14万8千光年」というのは、初代に心酔した世代にとっては、もう呪文のようなものだが、この距離は現在では見直され、15万7千光年となっている。

 ヤマト放映直後の時期は、NASAの惑星探査機ボイジャーによって太陽系像が盛んに塗り替えられた時期であり、当時の教育テレビの番組の中で、松本零士が、SFを描くのが難しい時代と言っていたのを思い出す。ここでいう「難しさ」というのは、新たな科学的発見を経ても陳腐化しないSFを描くのが難しいという意味だと思うが、そこには、ストーリー上必要な嘘を除き、科学的知見に反したことは描かないという暗黙の前提があるからではないか。大マゼラン雲まで14万8千光年というのは、あくまで初代ヤマト放映当時の最新の知見であり、今日、「SFとして」ヤマトを描きなおすのであれば、15万7千光年であるべきだったと思う。何かの子供番組の制作裏話だったと思うが、子供番組は教育番組でなければならないということを言っていた。同様に、SFアニメは、科学啓蒙アニメであってほしいと思う。

 仮に、大マゼラン雲まで15万7千光年、でもヤマトの目的地は14万8千光年とした場合、どんなことになるのか。ウィキペディア日本語版によると、大マゼラン雲の直径は1.5万光年。ごく単純化すると、大マゼラン雲の地球に近い端は14万9500万光年なので、すごく甘めに見ると、イスカンダルは大マゼラン雲の地球側のはずれに位置していることになる。まあ、わざわざ隣の銀河まで出かけてくる理由を考える上ではプラスなのかもしれない。

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 大マゼラン雲までの距離は、「セファイド型変光星」により測定されている。

 セファイド型変光星とは、ケフェウス座δ星に代表される脈動変光星。変光範囲は1〜2等級、周期は2〜50日で、スペクトル型はF〜K型に属する黄色超巨星である。変光周期が長いほど絶対等級が明るいという性質があることから、変光周期を測定すると絶対等級を推定でき、見かけの光度等級との比較から距離を割り出すことができる。セファイド型変光星により20メガパーセク(約6500万光年、1パーセクは約3.26光年)くらいまでは測定できるとされており、大マゼラン雲やアンドロメダ銀河までの距離も、セファイド型変光星の観測により決定されている。周期と光度が相関するのは、光度変化が光球の膨張・収縮によって引き起こされるからで、小さく暗いセファイドほど膨張収縮の距離が短く、大きく明るいセファイドほど膨張収縮の距離が長いためらしい。

 ヤマト放映当時、14万8千光年と言われていた大マゼラン雲までの距離が15万7千光年に、200万光年と言われていたアンドロメダ銀河までの距離は254万光年に見直されている(しかし、アンドロメダ銀河までは比較的最近、220万光年と読んだような気がする。これほど値の変化が激しいと、別に14万8千光年でもいいじゃん、と言われてしまいそうだ)。これは、セファイド型変光星が実は2つのタイプに分けられることがわかり、それぞれ距離-光度関係が異なるために見直されたもの、と何かで読んだのだが、いま調べてみると、この2つのタイプ分けがなされたのは1940年代、ウォルター・バーデ(http://en.wikipedia.org/wiki/Wilhelm_Heinrich_Walter_Baade)の研究によるとのことなので、これとは直接関係ない、観測精度の向上によるものなのだろう。

 セファイド型変光星の周期-光度関係は、リービット(http://en.wikipedia.org/wiki/Henrietta_Swan_Leavitt)が大小マゼラン雲に含まれる1777個の変光星を観測し、1912年に発表したもの。大小マゼラン雲に含まれる星であれば、地球から見れば「ほぼ」等距離と考えて差し支えなく、各々の距離の差を考慮せずに、光度と周期の関係を把握できた。この研究が、エドウィン・ハッブルによる、セファイド型変光星を用いたアンドロメダ銀河の距離測定、さらには近傍銀河の距離-後退速度関係=ハッブルの法則の発見へと引き継がれていく。大マゼラン雲は、そもそもセファイド型変光星という、宇宙のものさしの一つの発見の舞台となった場所と言える。

 であれば、なおさらその距離については、研究に敬意を表する意味でも今日の値を使ってほしいと思えてくる。また、大マゼラン雲内のセファイド型変光星の一つが戦いの舞台として登場するのも面白いかもしれない。圧倒的なガミラス艦隊の包囲を、セファイドの膨張・収縮を利用して突破するというのはどうか?(もっとも、地球人が知っているのは16万年あまりも前の姿ではあるのだが)

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 大マゼラン雲といえば、「SPACE BATTLESHIPヤマト」でもちらっと映った「タランチュラ星雲」(http://en.wikipedia.org/wiki/Tarantula_Nebula)、「カミオカンデ」でニュートリノが観測され東京大学名誉教授の小柴昌俊氏がノーベル賞を受賞した超新星1987A(http://ja.wikipedia.org/wiki/SN_1987A)などの名所もある。いずれも地球からの距離は16万光年代で、七色星団の代わりにタランチュラ星雲というのも面白そうではあるが、そもそもの「14万8千光年」を見直さないと、あえて立ち寄る理由はなくなってしまう。

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 なお、松本零士による初期の設定資料(http://homepage1.nifty.com/akk-yihitk/gennzu3.htm)を見ると、大マゼラン雲までの距離は、文献により14万8千光年から20万光年の開きがあり、中間値は17万光年との記述が見える。なぜ中間値をとらなかったのかは不明。大マゼラン雲には変光星がたくさんあるとの記述もある。実際問題、大マゼラン雲に変光星が豊富なわけではないと思うので、前述のリービットによるセファイド観測にも影響を受けているのかもしれない。

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「宇宙戦艦ヤマト2199」では、イスカンダルまで「16万8千光年」という値が使われるようだ。ウィキペディアの大マゼラン雲関連項目を読む限りでは、前述の超新星SN1987Aまでの距離がこの値になっている。大マゼラン雲の最近の距離値15万7千光年と精度が異なるのだろうが、敢えてこの値を使うのは、SN1987Aを何らかの形で物語に絡める意図があるのだろうか。だとすると楽しみである。

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◎参考サイト

○宇宙戦艦ヤマト2199
・公式サイト
http://yamato2199.net/
・ウィキペディア日本語版
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%87%E5%AE%99%E6%88%A6%E8%89%A6%E3%83%A4%E3%83%9E%E3%83%882199
・バンダイビジュアル
http://dbeat.bandaivisual.co.jp/yamato-portal/yamato_2199/

○イスカンダル
・ウィキペディア日本語版
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%82%AB%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%AB_(%E5%AE%87%E5%AE%99%E6%88%A6%E8%89%A6%E3%83%A4%E3%83%9E%E3%83%88)


○大マゼラン雲
・ウィキペディア日本語版
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E3%83%9E%E3%82%BC%E3%83%A9%E3%83%B3%E9%9B%B2
・同英語版
・このサイトの関連記事 http://masamich.at.webry.info/201203/article_3.html

○セファイド(ケファイド)型変光星
・ウィキペディア日本語版
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B1%E3%83%95%E3%82%A7%E3%82%A4%E3%83%89%E5%A4%89%E5%85%89%E6%98%9F
・同英語版
http://en.wikipedia.org/wiki/Cepheid_variable
・UKAI’s ASTRO HOUSE http://www.kouka.ne.jp/~w1022077/index.htm
 天体の距離の測定http://www.kouka.ne.jp/~w1022077/distance1/distance.htm
・宇宙の果てはこうなっているhttp://astrohouse.fc2web.com/
 第III章-1宇宙のものさし http://astrohouse.fc2web.com/hate301.htm
・科学と技術の諸相http://www005.upp.so-net.ne.jp/yoshida_n/index.htm
 質問集http://www005.upp.so-net.ne.jp/yoshida_n/qa_a31.htm
・アストロフォトクラブ(Astro Photo Club)http://www.astrophotoclub.com/index.htm
 銀河の距離を測るhttp://www.astrophotoclub.com/cepheid.htm

○設定等
・宇宙戦艦ヤマトファンクラブ(N.W.A.)&ヤマトパーティ(公認ページ)http://homepage1.nifty.com/akk-yihitk/
 大航路図 原図 http://homepage1.nifty.com/akk-yihitk/y.ranndo2.htm

最終更新 2012/03/10


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