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zoom RSS 地球からグリーゼ581へ〜宇宙戦艦ヤマト2199第三章まで

<<   作成日時 : 2012/12/08 17:23   >>

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「宇宙戦艦ヤマト」でたどる道筋については、別記事で整理しましたが、「2199」では出発時期が2月になったことをはじめ、立ち寄る恒星も変更になっているので、改めて第3章までを整理してみます。

星図の描画には、国立天文台の「Mitaka」を用いました。

1)太陽系内

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図1 2199年2月の太陽系(木星より内側)

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図2 2199年2月の太陽系(木星以遠)

 2199年2月には、冥王星は、地球から見て太陽とほぼ逆方向に位置しています。また、火星、木星、土星は地球から見て太陽と同じ方向にあります。

 1話でイスカンダルから飛来するシェヘラザードは、海王星を通過して火星に到達しています。いずれも冥王星とは太陽をはさんで逆方向なので、メ号作戦でガミラスを冥王星付近にくぎ付けにしておくのはうなづけます。

 作中では、冥王星から発射された超大型ミサイル(惑星間弾道ミサイル)は、木星を通過しているので、一度太陽の反対側の木星まで回り込んで、地球の夜明け側の明暗境界線上にいるヤマトに向かっていくことになります。

 地球を発進したヤマトは、太陽をはさんで地球とは反対側にある火星まで通常空間を飛行し、天王星軌道までのワープテストを行いますが、不測の障害物により木星近傍にワープアウトします。その後、土星系を経て再び太陽の反対側にある冥王星に向かいます。

 ここでは、行程が太陽から一様に遠ざかるよう軌跡を描いてみました。ヤマトは惑星の軌道運動よりはるかに速く飛行できるので、実際には次の目的地にほぼ直線状に飛行できるのでしょうが、目的地は、この後も太陽をはさんであちこちに変わるので、直線で描くと太陽近傍を何度も通過するコースになってしまうでしょう。

2)太陽系外縁

 冥王星を出発した後、7話冒頭で小天体とすれ違うヤマトが描写され、エッジワース・カイパーベルト内を飛行していることが示唆されます。

 「太陽系赤道際」の終盤でヤマトはヘリオポーズを通過するとともに、望遠鏡映像により地球を振り返りますが、このときの地球は満月状(位相角が小さい)に描かれており、正面から太陽光を浴びています。言い換えると、このときのヤマトの位置は、太陽をはさんで地球と反対方向にあります。もし冥王星からまっすぐ太陽から離れる方向に進んだとすると、地球のほぼ夜側が見えるはずです。このことから、冥王星を出発したヤマトは、みたび太陽の反対方向に向かったことになります。

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図3 2199年2月の太陽系外縁部

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図4 ヘリオポーズ付近からみた太陽系と地球


 地球の位相角が小さいということは、望遠鏡の視野の中で地球が太陽のごく近くにあるということです。ボイジャー1号が1990年に60億キロの距離から太陽系の全惑星の画像を撮影した際には、太陽光によるカメラの損傷を避けるため太陽から遠い惑星から順に撮影しました。このとき撮影された地球は1ピクセルにも満たないものです。「2199」作中の望遠鏡のポインティングの正確さと解像度は驚異的です。

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図5 ボイジャー1号が1990年に60億キロから撮影した地球


 作中では、レーダー画面上で、ヤマトはヘリオポーズをほぼ直角に横切っています。ヘリオポーズは、太陽から噴き出した荷電粒子(太陽風)が、恒星間空間の同様の風と干渉する境界面の一つで、太陽から50〜160天文単位の距離にあると考えられています。太陽圏全体の外形は球状ではなく、近傍の恒星に対する太陽系の運動方向(天球上の「太陽向点」)側がつぶれ、反対方向になびいた形をしていると考えられています。

 作中では、通過に伴い船体が揺れるおそれもある旨の艦内放送がありますが、ヘリオポーズは実質的に真空であり、船体に衝撃が加わるようなことはないでしょう。(波動エンジンが星間の荷電粒子に敏感な性質を持つのであれば話は別ですが)

 なお、アメリカの惑星探査機ボイジャー1号、2号はヘリオポーズの方向に向かっており、1号は2005年にヘリオポーズの内側にあるとされる末端衝撃波面(ターミネーション・ショック)を通過しています。

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図6 ヘリオスフィア(太陽圏)の新旧概念図(Wikipedia英語版より)


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図7 2012年12月の太陽系外縁部


3)シリウス系

 第8話冒頭で、ヤマトは地球から8.6光年にあるシリウス星系を飛行しており、搭載している「VLBI望遠鏡」により地球を観測します。ここで見えるのは、ヤマト出発から8.6年前、ガミラス侵攻以前の青い地球ですが、これもほぼ満月状であることから、太陽を挟んでシリウスとは反対側にあることになります。8.6年前ということは、ヤマト出発時点と比べて、軌道上の地球の位置は半周程度(0.6年分)ずれていますから、満月上にみえること自体は矛盾していません。

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図8 太陽系近傍の恒星

 太陽との位相角が小さいことによる撮影の難しさは、ヘリオポーズからの撮影と同様であり、距離が離れた分だけさらに難易度は高くなります。シリウスから地球を撮像するのは、地球からシリウス系の惑星を観測するのに相当します。2012年現在みつかっている太陽系外惑星は候補も含めて2000個あまりにのぼりますが、大半は間接的に存在が推定されているものです。直接撮像されたのは13個のみであり、主星から数十〜数百天文単位離れた、木星の何倍もある巨大な(したがって明るい)惑星のみ、しかも点像です。

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図9 ハッブル宇宙望遠鏡で撮影されたフォーマルハウトをめぐる惑星

 「VLBI望遠鏡」がどういう装置か不明ですが、8.6光年も離れた惑星を円盤像として撮像できるのはやはり驚異的です。作中ではシリウスで地球の見納めとされていましたが、次の目的地であるグリーゼ581は地球から約20光年で、シリウスの2倍強にすぎません。したがってシリウスからの半分程度の解像度で地球を拝めそうな気もしますが、そこは「VLBI望遠鏡」特有の何らかの制約があるのかもしれません。

 ところで、シリウスは主系列性と白色矮星(シリウスB)から成る連星系であり、それ自体興味深いですが、「2199」では単なる通過地点になっているのが惜しいです。

4)グリーゼ581系

 8話冒頭で新見さんが検討しているグリーゼ581の星系図のタイトルが「Gliese581 Solor System」となっていますが、「Gliese581 System」でよさそうな気がします。また、図中で惑星が時計回りに公転表示されていますが、ふつう太陽系の軌道図は太陽の北極から描くので惑星の公転方向は反時計回りとなります。新見さんが見ていたのは南極から見た図となっています。

 図8に掲げたとおり、グリーゼ581は、てんびん座の方向にあり、太陽系から見るとシリウスとは反対方向にあります。作中では、シリウス系を出発する際、真田副長が、次のワープでは12光年を跳躍すると言っています。太陽からの距離の差ということならその通りではありますが、実際には太陽系をはさんで移動するので26.3光年の移動となります。また、グリーゼ581までの行程では黄道面(太陽系の軌道面)から数十度の領域に留まっています。最終目的地である大マゼラン雲は黄道南極付近にずっと見えていますが、これに直行するコースになっていません。「2199」での旅も旧作と同様、紆余曲折に富んでいるようです。

【追記】
◎銀河座標
 第10話の冒頭で、ワープに先立って座標を入力する場面がある。このとき、ワープ先の座標は、「絶対銀経 274.76度、絶対銀緯-12.73度、距離 63.70パーセク」と言っています。1パーセクは約3.26光年なので、このときのワープ距離は約207.7光年ということになります。
 現実の銀河座標は、地球から見た銀河中心方向を原点とし、銀河円盤に平行な面に沿って反時計回りに銀経をとり、垂直方向に銀緯を取る。地球から見て北側を銀河北極としています。
 作中で使われているのは「絶対」銀経であり、さらにモニターを見ると、銀河座標数値の上に「ABS」(絶対)と「REL」(相対)の表示があり、ABSがアクティブになっています。このことから、作中では「絶対」「相対」の二種の銀河座標が使われていることがわかります。それぞれどのようなものか説明がありませんが、原点を地球ではなく、銀河中心や船にとるなど、座標の取り方にバリエーションがあるのかもしれません。
 また、同じく10話で、ワープに要する時間(主観時間)は1ナノ秒と説明されています。

◎単位
 距離については、大きな距離の単位は、2199ではパーセクという実在単位が多用されています。比較的短い距離は単位なしが多いようです。シリーズ初期には光分など実在単位が用いられていたので、少し残念です。
 速度は「Sノット」が多用されていますが、これも実在単位との換算が不明です。

【追記2】
 前出のワープ先座標は、大マゼラン雲の銀河座標(実際に使われているもの)銀経278.69度(-81.31度)、銀緯-33.15度、第4章で出てくるバラン星系の銀河座標、銀経280.5度(-79.50度)、銀緯-32.9度に近い値です。「絶対銀経」は、現在使われている地球を原点とした銀河座標と考えると、10話のワープ先は、地球から見ておおむね大マゼラン雲の方角にあることになります。

■参考リンク

四次元デジタル宇宙ビューアー「Mitaka」
http://4d2u.nao.ac.jp/html/program/mitaka/

太陽圏
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%AA%E9%99%BD%E5%9C%8F

太陽系外惑星
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%AA%E9%99%BD%E7%B3%BB%E5%A4%96%E6%83%91%E6%98%9F
Extrasolor Planet
http://en.wikipedia.org/wiki/Extrasolar_planet

直接撮像された太陽系外惑星一覧
List of extrasolar planets detected by timing
http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_extrasolar_planets_detected_by_timing

ハッブル宇宙望遠鏡がフォーマルハウトを公転する惑星を直接撮像
http://hubblesite.org/newscenter/archive/releases/2008/39/image/c/

太陽系ポートレート(60枚モザイク)
PIA00451: Solar System Portrait - 60 Frame Mosaic
http://photojournal.jpl.nasa.gov/catalog/PI
A00451

ペイル・ブルー・ドット(ボイジャーが撮影した地球)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9A%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%96%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%BB

%E3%83%89%E3%83%83%E3%83%88
http://en.wikipedia.org/wiki/Pale_Blue_Dot

グリーゼ581
http://en.wikipedia.org/wiki/Gliese_581

フォーマルハウト
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%83%8F%E3%82%A6%E3%83%88

Key words:"Star Blazers 2199", "From the Earth to the Gliese 581"


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