MASA Planetary Log

アクセスカウンタ

zoom RSS 回転する宇宙船への移乗〜ヤマト2199第14話

<<   作成日時 : 2013/02/25 22:29   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 0

※物語の内容に触れています。

「宇宙戦艦ヤマト2199」14話では、制御を失って回転するヤマトに、パトロールから帰還した古代と森雪が移乗するシーンがあります。古代たちは、乗ってきた100式偵察機を艦橋の翼部の下面に降着させ、非常用エアロックから艦内に入ります。

 archipelさんのたまにネタバレするシネマレビューでも触れられていますが、この一連のシーンは、アーサー・C・クラークの「2010年宇宙の旅」を想い起させ、ニヤリとさせられます。「2010年宇宙の旅」では、米ソ共同調査隊が木星に派遣されます。「2001年宇宙の旅」で、ボーマン船長がイオの軌道上に停泊させたディスカバリー号を復旧し、地球に帰還させるためです。アメリカ隊のウォルター・カーノウと、ソ連隊のマックス・ブライロフスキーの二人の技術者が、宇宙遊泳でディスカバリー号を目指します。ヤマト2199の14話の描写を考える上で面白いので、少し長いですが、関係する部分を引用します。

 いくら条件に恵まれていても、いうことを聞かない無人宇宙船に乗り込むのはたやすいことではない。それどころか、おそろしく危険ですらある。
 ウォルター・カーノウは抽象的な原則としては、そのことを知っていた。だが、とんぼ返りをうつディスカバリー号の百メートルの全長を、安全な距離を保ったレオーノフ号からながめるまで、それを骨身には感じていなかった。ディスカバリー号の船首遠心機というかメリーゴーラウンドの回転に、数年前から摩擦によるブレーキがかかり、その角運動量が残りの船体構造に伝わったのである。いまや楽隊のバトントワラーが高々と投げ上げるバトンそのままに、遺棄された宇宙船はゆっくりと軌道上をころがっていた。
 第一の問題は、ディスカバリー号を制御不能なばかりか、ほとんど接近不能にしているとんぼ返りを停止させることである。(中略)
 ディスカバリー号は二百メートルほどのところにあり、風車のように回転しながら、イオをめぐる軌道上を二人のあとからついてくる。(中略)
 遺棄船に近づく安全な経路はひとつしかない。それはゆっくりと回転する船体の軸部分をめざすルートだ。ディスカバリー号の回転軸は船体のほぼ中央、メイン・アンテナ複合体に近いところにある。ブライロフスキーは、たよりない相棒を引きつれて、まさにその部分に向かっていた。(中略)
 ディスカバリー号はいまやすらりと長い、巨大な亜鈴となり、前方の天空をおおいつくして悠長なとんぼ返りを打っている。一回転を終えるまでに数分がかかるが、遠い末端部は相当なスピードで動いていた。カーノウはそちらには目をくれず、しだいに迫ってくる――動きのない――軸部分を見つめた。
 (中略)二人はいまディスカバリー号に対する限り静止していた。カーノウはただ手近のでっぱりに手をのばし、ブライロフスキーをたぐりよせるだけでよかった。
 (中略)
 もんどりうつ船の軸部分にからだを固定すると、回転は気にならなくなった――目の前の金属プレートを見つめていれば、ほとんど意識せずにすんだ。ディスカバリー号の本体であるすらりとした円筒部づたいに、梯子がえんえんと伸びていて、これがつぎの目標である。末端にある球形の司令モジュールは数光年もかなたにあるように見えたが、そこまでわずか五十メートルであることはちゃんと知っていた。
 (中略)「気を付けてくれ。ここから先はずっと下りだ。しかし、べつに問題はない。片手でもつかまっていられる。いちばん下まで行っても、重力は十分の一Gだ。(中略)」
 「(中略)おれは足の方からおりるよ。逆立ちして梯子を下るのは趣味じゃないんだ――いくら重力が小さくてもな」
 (中略)
 ブライロフスキーのことばは、もちろん正しかった。船のとんぼ返りによる回転重力には、楽に逆らうことができた。慣れるにつれ、カーノウは重力の生み出す方向感覚をむしろありがたく受け入れていた。
 気がつくと二人は、変色した巨大な球状部に達していた。ディスカバリー号の管制および生命維持モジュールで、ほんの数メートル先には非常用ハッチがある。ボーマンが、ハルとの最後の対決のときにあけたあのハッチだ、とカーノウは気づいた。
 (中略)
 非常に長く思える時間、ブライロフスキーは手動コントロールをいじくっていたが、やがてエアロックのよそよそしい洞穴への道はすっかりひらかれた。(中略)
 船体のこの部分はゼロG向きの設計がなされているため、前進は困難だった。これに気ままな回転による人工重力が加わって、たかの知れた力ではあるものの、思わぬ方向にからだが運ばれるおそれがあった。
 カーノウは通路を数メートルすべりおり、でっぱりにつかまって止まった。
「まず最初にやらなければいけないのは、このくそいまいましいスピンを止めることだな。(中略)」
 ディスカバリー号にとつぜん航行灯や内部照明がともり、全体がクリスマス・ツリーそこのけに輝きだすと、レオーノフ号にあがった歓声は、二隻の船を隔てる真空を越えてひびきわたるかに思われた。(中略)
「(中略)これから遠心機に入り、ベアリングを調べる。早いうちに動かしたいから。」
「待って、ウォルター、それは大切なことなの?それは重力があれば便利だけど、もう長いあいだゼロGでやってきたことだし」
「重力がほしいわけじゃないんだ。あれば確かに都合はいいが…。それ以上に、遠心機を回せば船の回転が消去される――とんぼ返りをうたなくなる。そうなればエアロックを接続できて、EVAもしなくてすむ。仕事はその方が百倍も楽になる」
「名案ね、ウォルター。ただし、その…風車をこちらにくっつけるのはやめて。ベアリングがつまって遠心機が急停止することもあるから。そうなったら、この船はばらばらだわ」
(中略)
 慎重の上にも慎重に、点検の間をいくたびもとりながら動力が遠心機のモーターに注ぎこまれ、巨大な動輪はスピードをあげると、船全体に散った角運動量を吸収しはじめた。ディスカバリー号はこみいったすりこぎ運動を見せるようになり、やがてとんぼ返りはほとんど消え失せた。よけいな回転は最終的に姿勢制御噴射で消去され、ついに二隻の宇宙船はとなりあわせに仲よく静止した。小柄でずんぐりしたレオーノフ号を、その大きさで威圧するすらりと細長いディスカバリー号。

(「2010年宇宙の旅[新版]」アーサー・C・クラーク 伊藤典夫 訳 早川書房〈SF1733〉)



 「2010年宇宙の旅」では、ディスカバリー号の回転中心付近に取り付いています。これに対して、ヤマト2199では、回転中心から離れた艦橋部分に取り付いています。したがって古代たちは、中心からの距離に応じた遠心加速度を受けることになります。

画像


 回転する物体に働く遠心加速度は、回転半径をr(m)、回転の角速度をω(ラジアン/秒)とすると、rω2(m/s2)となります。

 映像で測ってみると、ヤマトは約15秒周期で回転しています。ヤマトの艦橋は高さ60m程度なので、ヤマトが艦橋基部近くを中心に回転しているとして、艦橋の翼までをざっくり50mとすると、遠心加速度は毎秒毎秒8.8m、つまり0.9G程度になります。地球上と同じくらいの疑似重力が働いているわけで、地球上と同様に行動できる半面、一歩踏み外せば宇宙空間に猛スピードで投げ出されてしまいます。

 また、100式偵察機が何トンあるかわかりませんが、仮に現存する戦闘機並みとすると、艦橋の翼には、このとき数十トンの負荷がかかっていることになります。ちなみに、100式は全長14.2mなのに対し、F4戦闘機は全長19.2m、空虚重量約14トン、F14戦闘機は全長19.1m、空虚重量約19トンです。

 いずれにせよ、作中のような回転中心からはずれた位置への着艦は、遠心力に起因する不都合があることがわかります。ヤマトがどんな力をうけてあれほどの回転を始めたのか作中では明らかにされていませんが、そういう事態を想定して、回転の中心になりそうな箇所の近く、この場合は艦橋基部付近の舷側に非常用の降着装置とエアロックを備えておくべきかもしれません。

 ※9話でアナライザーとガミロイド「オルタ」が甲板に出るシーンがあったので、慣性制御は艦内だけでなく甲板にも作用していたのではないか、だったら甲板に着艦してもよかったのではないかとも思いましたが、そういえば破壊されたオルタは宇宙空間に漂っていってしまっていたので、あれは磁力か何かで甲板に吸着していただけなのかもしれません。

 なお、ヤマトの全長は、2199では333mなので、船体の中央付近を軸に周期15秒で回転しているとき、艦首または艦尾(中心から167m)での遠心加速度は、3G程度になります。

 「2010年宇宙の旅」では、ディスカバリー号の全長を100m、回転中心から先端までを50mとすると、先端部の遠心加速度が0.1g、つまり0.98m/s^2になる角速度は0.14ラジアン/秒、周期は約45秒となります(文中では数分となっていますが)。映画「2010年」ではもう少し速く、予告編映像から計測すると、30秒内外の周期で回転しているように見受けられます。

画像


Keywords: "Star blazers 2199"



宇宙戦艦ヤマト2199 4【Blu-ray】 [ 菅生隆之 ]
楽天ブックス
菅生隆之 小野大輔 鈴村健一【VDCP_700】 発売日:2013年02月22日 予約締切日:201


楽天市場 by 宇宙戦艦ヤマト2199 4【Blu-ray】 [ 菅生隆之 ] の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル





2010年【Blu-ray】 [ ロイ・シャイダー ]
楽天ブックス
ロイ・シャイダー ジョン・リスゴー ボブ・バラバン ピーター・ハイアムズ ★Bluーray2枚購入で


楽天市場 by 2010年【Blu-ray】 [ ロイ・シャイダー ] の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル





2010年宇宙の旅新版 [ アーサー・チャールズ・クラーク ]
楽天ブックス
ハヤカワ文庫 アーサー・チャールズ・クラーク 伊藤典夫 早川書房発行年月:2009年11月25日 予


楽天市場 by 2010年宇宙の旅新版 [ アーサー・チャールズ・クラーク ] の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
なるほど(納得、参考になった、ヘー)

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
回転する宇宙船への移乗〜ヤマト2199第14話 MASA Planetary Log/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる