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zoom RSS 「VLBI望遠鏡」というもの〜宇宙戦艦ヤマト2199第三章

<<   作成日時 : 2013/03/06 02:01   >>

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「宇宙戦艦ヤマト2199」第8話冒頭で、ヤマトはシリウス星系にいて、8.6光年離れた地球を「VLBI望遠鏡」を用いて観測します(別記事で触れたとおり)。ここで、「VLBI望遠鏡」というものについて、少し考えてみます。

「VLBI望遠鏡」の「VLBI」はVery Long Baseline Interferometry(超長基線干渉計)の略で、実在する技術です。「干渉計」は、例えば複数の電波望遠鏡などの観測器(素子)で受信した信号を干渉させることにより発信源の天体などを高い分解能で観測する手法で、個々の素子を結ぶ線を基線と言います。超長基線というのは、大陸間や地球と人工衛星など非常に長い基線で観測する場合を指します。VLBIは、天体の観測のほか、クエーサーなど非常に遠い電波源を観測することで、逆に基線の長さを精密に決定し、プレート運動など地球上の小さな動きをとらえることにも利用されています。

 ヤマト2199の「VLBI望遠鏡」は、可視光で地球をとらえていますから、素子は光学望遠鏡のはずです。現代では、「VLBI」といえば、もっぱら電波によるものを指し、光によるものは、「光干渉計(Optical Interferometry)」や「光-近赤外干渉計(Optical near-IR interferometry)」などと呼ばれます。



 光も電波も電磁波の一種ですが、光は電波に比べて波長が短いため、長い基線で観測した信号をうまくタイミングをあわせて干渉させるのは格段に難しくなります。「長い(Long)」も「非常に長い(Very Long)」も対比の問題ではありますが、光干渉計の基線長は、2012年現在稼働中または計画中のものでは、米海軍光干渉計(NOI)の437mが最長で、「超長基線」という言い方はされていないようです。検索すると、「Long Baseline Optical Interferometry」(長基線光干渉計)という言い方ならヒットします。ヤマトの時代には、「超長基線」の光干渉計が実現しているのかもしれませんが、その場合は「VLBOI」という呼び方になりそうです。「VLBI望遠鏡」というのは、「波動砲」と同じようにVLBOIの通称なのかもしれません。

 次にヤマトの「VLBI望遠鏡」がどんな装置なのかを考えてみます。別記事で不明と書いた部分です。

 光干渉計ということは、2基以上の光学望遠鏡を組み合わせた装置ということになります。作中の画面ではそれらしきものは描かれていませんが、ヤマトの船体にとりつけられた望遠鏡をつかっているとすると、基線長は最大でもヤマトの全長である333m、エンジンノズルなどを除外すると、300m弱と考えられます。干渉計の分解能は、観測波長÷基線長(ラジアン)で与えられます。可視光なので波長500ナノメートル、基線長300mとすると、分解能は344マイクロ秒角となります。

 一方、8.6光年離れた地球の視直径は32マイクロ秒角ですが、作中では描かれているように、地球表面の雲や海陸を見分けるにはさらに高い分解能が要求されます。たとえば地球の直径の100分の1くらいのものまで見分けるには、0.32マイクロ秒角の分解能が必要になります。このときの基線長は約300qです。現代の光干渉計に比べると1000倍のスケールですから、たしかに光干渉計としては超長基線と呼んでもいいかもしれません。

 現代の光干渉計では望遠鏡どうしを光ファイバーなどでつなぎ、観測した光を直接干渉させる必要がありますが、ヤマトの時代、(現代の電波干渉計のように)別々の場所で記録した信号をコンピューター上で干渉させられる技術があるとすれば、例えば艦載機を飛ばすなどして数百キロの基線長を実現できるかもしれません。

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 ただし作中では、艦長の指示で即座に映像が表示されていますし、地球を観測したあと、すぐにグリーゼ581系に向けたワープ準備に入っていますから、少なくともこの場面では艦載機の併用は難しいでしょう。

 単独で実現できそうな方法というと、「合成開口レーダー(Synthetic Aperture Radar:SAR )」が思い浮かびます。合成開口レーダーは、航空機や人工衛星に搭載したレーダーで、移動しながら連続的に地表を観測することで、仮想的な大口径アンテナを形成し、高い分解能を実現する技術です。これまでに金星探査機マゼラン(金星)、土星探査機カッシーニ(衛星タイタン)、スペースシャトル・レーダー地形測量(SRTM)や陸域観測技術衛星「だいち」(地球)などで利用されています。



 ここからは全くの想像ですが、ヤマトが地球に対して直角方向に移動しながら、数百キロ離れた位置でとらえた光を干渉させることができたら、作中のような映像が得られるのではないでしょうか。合成開口レーダーならぬ「合成開口望遠鏡」(Synthetic Aperture Telescope:SAT)とでも言ったところでしょうか。

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 いずれにしろ「VLBI望遠鏡」のしくみはよくわからないのですが、シリウスであれほど高分解能で撮像できているのに、2倍強しか離れていないグリーゼ581ではできなくなってしまうのは、「VLBI望遠鏡」が直接撮像ではなく、干渉計のように何らかの処理をかませていることが原因で、8.6光年を超えると分解能が急速に低下するのかもしれません。

 それはさておき、ヤマト2199という架空の物語に、実在の観測技術に目を向ける機会をさりげなく織り込んでくれたことに拍手を送りたいと思います。

■参考サイト
兵庫県立大学西はりま天文台
http://www.nhao.jp/index-j.html
 干渉計の原理について
 http://www.nhao.jp/~tsumu/Research/Intr_interferometry/interferometer.html

国立天文台VERA (VLBI Exploration of Radio Astrometry)
http://veraserver.mtk.nao.ac.jp/
 宇宙科学II(電波天文学)第4回 電波干渉計(PDF)
 http://veraserver.mtk.nao.ac.jp/VERA/honma/lecture/komaba2011-4.pdf

国土地理院VLBI
http://www.spacegeodesy.go.jp/vlbi/ja/index.html

合成開口レーダー
JAXA SRTMの観測原理(詳細)
 http://iss.jaxa.jp/shuttle/flight/sts99/mis_principle_1.html
国土地理院 「干渉SAR」ってなに?
 http://vldb.gsi.go.jp/sokuchi/sar/mechanism/mechanism01.html

別冊日経サイエンス187「宇宙をひらく望遠鏡」
 http://www.nikkei-science.com/page/sci_book/bessatu/51187.html
 光干渉計で星の素顔を探る(※ダウンロード購入あり)
 http://www.nikkei-science.com/page/magazine/0106/light.ht

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