MASA Planetary Log

アクセスカウンタ

zoom RSS バック・トゥ・1985 この30年の冥王星探査 #PlutoFlyby #NewHorizons

<<   作成日時 : 2015/07/10 01:30   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 1 / コメント 0

冥王星探査機ニュー・ホライズンズの冥王星最接近前に、ふと過去の冥王星に関する記事など読んでみて、感慨がこみ上げてきた。

20世紀末、それまで仮説に過ぎなかったカイパーベルト天体(EKBO)が見つかり、同じく長らく発見されなかった太陽系外惑星が続々と発見され、宇宙観は劇的に変化した。冥王星を上回るEKBOも見つかるようになり、ニュー・ホライズンズが打ち上げられた2006年、冥王星は惑星から準惑星に再分類された。冥王星探査は、最も明るいEKBOの探査という意味を持つようになっていた。

ところで、1985年から2002年にかけての日経サイエンスの特集記事などを読み返していて、ニュー・ホライズンズは、ボイジャーがやり残したグランドツアーの総仕上げなのだと、ふと気づいた。ニュー・ホライズンズは、1990年代の段階では「プルートー・エクスプレス」と呼ばれていた。かつて、木星以遠のすべての惑星をひとつづきで調査する「グランドツアー計画」が構想された。それはボイジャー計画として実現し、1989年の海王星探査で成功裏に幕を下ろした。そして、冥王星が残された。ニュー・ホライズンズによる冥王星探査の終了は、グランドツアーの終了であり、そのとき、「9つの惑星」からなるかつての太陽系の時代が、本当の意味で終わるんじゃないかと思った。

以下、当時の記事や図表を抜書きしながら、その辺の感慨に浸ってみたい。

謎に包まれていた冥王星は、衛星カロンの発見と、カロンによる冥王星の食という好機に恵まれたことで、驚くほど詳細に調べ上げられていく。

なお、下記のうち初期の記事では衛星カロンは「シャロン」と表記されている。




別冊サイエンス76「ボイジャーの惑星探査」所収
「天王星、海王星、冥王星の衛星」(ブラウン、クルクシャンク 1985年5月)より


 ボイジャーは冥王星には近づかない。他の探査機が接近する予定もない。
(中略)
 1930年の冥王星の発見から半世紀を経ても、軌道要素以外に冥王星について知られていることは、冥王星が6.4日周期で変光することぐらいであった。
(中略)
 1978年に米国海軍天文台のクリスティとハリントンによってシャロンが発見され、冥王星の質量を計算することが可能になった。結果は、冥王星が月よりも小さく、ほとんど揮発性の物質で構成されるという仮説を裏付けた。
 シャロンは冥王星の付属物として観測され、分離して観測されることはないので大きさも質量もわからない。直径はおそらく冥王星の1/3から1/2くらいだろう。質量もかなり大きいだろう。それは、シャロンの公転周期と冥王星の自転周期が一致していることから予想される。2つの天体は常に同じ面を互いに向け合うが、このような状況は、衛星の質量が惑星の質量の5%以上の時だけ起こる。
(中略)
 今年になってジェット推進研究所のテデスコとテキサス大学のビンツェル、ハワイ大学のトーレンは、冥王星の食(とシャロンの掩蔽)を初めて観測した。食はシャロンの軌道面が地球への方向と平行になるときのみ起こり、冥王星の248年公転期間に2度あるだけである。食はここ数年の間は観測可能であり、その結果、冥王星とシャロンの直径と反射率そして表面の組成が明らかになるであろう。






別冊日経サイエンス97「ボイジャー最後の旅」所収
「冥王星と巨大衛星シャロン」(ビンゼル 1990年8月)より


 惑星科学者は衛星シャロンの発見にわきたった。冥王星の質量の正確な決定が可能になったからである。
(中略)
 シャロンの発見後、天文学者はすぐにある事実に気づいた。地球から見てシャロンの軌道が冥王星に重なる機会が冥王星の公転周期248年の間に2回あるということであった。
(中略)
 1世紀に1回しかない現象であるにもかかわらず、天文学者はこの現象を目撃するのに、それほど待たされなかった。最初の食は、シャロンの発見された年から1年ないし2年後に起こると予想された。(中略)もしクリスティが写真乾板の突起に気づいていなければ、現在起こっている食(南北戦争以来の食)は見逃されていたかもしれない。


画像



 表面に存在する明暗の斑点に起因する明るさの変化は、1950年代から捉えられており、冥王星の6.4日の自転周期はこれをもとに決定されたのである。
(中略)
 アリゾナ大学のマーシャリスと宇宙望遠鏡研究所のブーイは、冥王星の表面の明暗の模様がどのような分布をしていれば、観測された明るさの変化を再現できるかを調べてみた。(中略)1950年代に冥王星が明るく見えたのは、その南極の明るい領域が地球の方向を向いていたからである。(中略)比較的暗く、明暗のはっきりしている赤道領域が見えだすにつれて、冥王星は全体として暗くなり、自転による明るさの変化の幅は大きくなっていった。


画像



 もし、一連の食現象を太陽から見れば、食が起きるときのシャロンの冥王星に対する相対位置とその影は、単純に右から左へ一定の割合で動いていくことになろう。しかし、地球は冥王星と太陽を結んだ線に対して、6か月で左右に動き回る。これによって、冥王星とシャロンの見かけの位置は6か月の周期で動く。
(中略)
 冥王星の表面を通過するときも、その後方を通過するときも、重なって見える面積は同じである。しかし、明るさの減少は同じでなく、シャロンが冥王星の前方を横切る食の時の方が明るさの減少は大きかった。明らかに、同じ面積でも冥王星の方がシャロンより明るかったのである。


画像



 ここ10年の間、大気の存在は熱い議論の的になっていた。
(中略)
 幸運なことに、ある自然現象が大気の存在を教え、それを測定する機会を与えてくれた。それは恒星の食である。
(中略)
 1985年にハーバード大学のミンクとリック天文台のクレモラは、おとめ座にある12等の星が、冥王星の経路上にあることを見出した。(中略)恒星は冥王星の背後に隠れるときに、突然消失するのでなく、ゆっくりと減光したのである。このような振る舞いは、星の光が厚い大気の層の中へ次第に入っていき、吸収、屈折を受けるときの特徴的なものである。(中略)冥王星は透明な上層大気と、かなり不透明な下層大気を持っているようである。2つの層の境界はかなりはっきりしている。
(中略)冥王星は1989年に近日点に近づいた。その後、太陽から遠ざかるについて、次第に冷たくなり、20年か40年くらいで大気のメタンは凝縮し、フレッシュなメタンの雪の層となって、その表面を覆うかもしれない。このメタンの雪の層は冥王星が再び太陽に近づくまでそのままだろう。


画像



 不幸なことに、冥王星の表面と、大気とのダイナミックスの理解は、探査機による近距離からの観測まで待たねばならない。かつて1970年代に(のちにボイジャー計画となった)「グランドツアー」の一部として計画された冥王星探査は、資金難と、冥王星は「おもしろくない」といった偏見によってつぶされてしまった。
(中略)
 現在準備中のある探査計画は、単純な探査機を2機飛ばすというものである。(中略)探査機はそれぞれ別の軌道に乗せられ、地球と木星の重力をブースターとして利用して、1年の間隔をおいて冥王星に到達する。この探査機は21世紀早々に打ち上げとなり、14年後には冥王星に着くであろう。接近遭遇における観測は数か月続くが、詳しい観測ができる本当の意味での接近観測はほんの数時間である。
(中略)
 いままで、惑星はその秘密のベールを脱ぐたびに、美しく、途方に暮れるほどの大自然の底知れぬ広がりを見せつけてくれた。冥王星への探査が完了したときに、我々がそこにみるものは、いままで予想だにしないものであるに違いない。


画像





別冊日経サイエンス144所収
「最後の未踏地 冥王星への旅」(S.A.スターン* 2002年8月)より

*現ニュー・ホライズンズ計画主任

この記事では、ニュー・ホライズンズは「ニュー・ホライズン」と表記されている。


 凍りついた無数の天体からなるカイパーベルトを探り当てようと観測が試みられたものの、当時は無駄骨に終わった。(中略)1992年、ハワイのマウナケア天文台が初のカイパーベルト天体を発見した。(中略)冥王星が例外的存在でないのはいまや明らかだ。(中略)しかし残念なことに、地球からとても遠いため、くわしい観測ができない。あの高感度なハッブル宇宙望遠鏡をもってしても、冥王星の表面にぼんやりした明暗が見えるだけだ。


画像



 NASAは私たちのニュー・ホライズン計画を採択するにあたって、最善の科学的成果が期待できると同時に、スケジュール遅れや費用超過の心配が少ないと評価した。(中略)ただ、2006年に打ち上げないと、そのチャンスは失われてしまう。惑星の配置が変化し、木星によるスイングバイを利用して冥王星へ加速することができなくなるためだ。この機会を逃すと、木星が再び適切な位置にやってくる2018年まで待たなくてはならず、冥王星に接近できるのは早くても2020年代半ばになってしまう。
 その頃には冥王星は現在に比べて数億kmも太陽から遠ざかり、ずっと寒くなる。冥王星の自転軸は著しく傾いており、(中略)冥王星の地表のうち南半球の大部分がカロンの反射光も届かない極域の永久影領域となって、観測不能になってしまう。また、大気のほとんどが凝縮し、23世紀に冥王星は再び太陽に近づいて大気が復活するまで、観測のチャンスは失われてしまうだろう。
(中略)議会がニュー・ホライズン探査機の建造予算を承認すれば、冥王星・カロン系とカイパーベルトの探査は今から十数年後にあたる2015年の夏には始まる。この計画を支持することによって、米国は1960年代に金星と火星を調べた歴史的なマリナー計画に始まった太陽系の基礎的探査を、ついに完成させることになる。


画像





COSMOS(上) [ カール・セーガン ]
楽天ブックス
朝日選書 カール・セーガン 木村繁 朝日新聞出版発行年月:2013年06月11日 予約締切日:201


楽天市場 by COSMOS(上) [ カール・セーガン ] の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル





COSMOS(下) [ カール・セーガン ]
楽天ブックス
朝日選書 カール・セーガン 木村繁 朝日新聞出版発行年月:2013年06月11日 予約締切日:201


楽天市場 by COSMOS(下) [ カール・セーガン ] の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
冥王星探査機ニューホライズンが観測データの送信完了に至ったのはいつごろのこと?
●●●●★科学★●● 問題:2015年(平成27年)の7月14日、冥王星探査機ニュー・ホライズンズが冥王星に到達し、脇を走り抜けたようです。いままでほとんど不明だった遠くて小さな準惑星の姿が、ようやくはっきりと視界に捉えられました。 ▼冥王星探査機ニュー・ホライズンズ ◇*HP「ニュー・ホライズンズ - Google 検索」(画像) https://www.google.co.jp/search?q=%E5%86%A5%E7%8E%8B%E6%98%9F%E6%8E%A2%E6%9... ...続きを見る
町人思案橋・クイズ集
2016/02/26 23:04

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
バック・トゥ・1985 この30年の冥王星探査 #PlutoFlyby #NewHorizons MASA Planetary Log/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる