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zoom RSS 冥王星の想像図の変遷:予想はどこまで当たっていたのか

<<   作成日時 : 2015/07/20 23:13   >>

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冥王星は、1977年に打ち上げられたボイジャー1号、2号の探査のターゲットから外れており、木星から海王星までの外惑星の各種図版が描きかえられたあとも、冥王星だけは長らく想像図にとどまっていた。この7月14日、NASAの冥王星探査機ニューホライズンズ(New Horizons)が冥王星に接近通過し、ようやく鮮明な画像で置き換えられることになりそうだ。来年用の理科の教科書には、さっそくニューホライズンズの画像が使われるのではないだろうか。

ここで、冥王星の各種の想像図の変遷をまとめてみたい。

■「宇宙戦艦ヤマト」で描かれた冥王星(1974年)
薄暗く青みがかった、厚い雲がある惑星として描かれている。
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反射衛星の選定画面では、海陸の分布らしい模様が描かれている。
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同じく「冥王星の衛星」。このころ、カロンは未発見。かなり低い軌道を回る小さな衛星として描かれている。
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■銀河鉄道999で描かれた冥王星(1978年)
やはり青っぽく描かれている。
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■「宇宙戦艦ヤマト2199」で描かれた冥王星(2012年)
緑がかって描かれている。
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なお、アニメーションで描かれてきた冥王星については、「大匙屋@セミリタイア」の「『冥王星』はアニメでどう描かれてきたのか」で詳しくまとめられている。


■Newton別冊「太陽系のすべて」所収「太陽系のすべて」(初出1984年1月号)で使われている冥王星とカロンの想像図
青っぽく、かつ多くのクレーターが描かれている。惑星規模の明暗分布に乏しく、水星に似ている。
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JHT's Planetary Pixel Emporiumに掲載されている冥王星。木星の衛星ガニメデの地表画像をベースにした想像図。
最終更新は2012年だが、MASAが惑星画像のページを立ち上げたころから掲載されていたので、少なくとも2001年頃からこの絵が使われていると思う。
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ここまでの想像図に共通しているのは、寒色系で描かれていることである。太陽から最も遠い凍てついた最果ての惑星、というイメージにはぴったりである。冥王星の色については、地上望遠鏡からの分光観測により、塗り替えられていくことになる。

「JHT's」は明らかに冥王星の色が科学的にわかってきてからの想像図なので、「らしさ」をねらって意図的に寒色系を使っていると思われる。「ヤマト2199」は、ガミラスによって環境改造がなされているという設定なので、これはこれでいいと思う(というか、「2199」は、そのへんの理屈付けがいちいちぬかりがない)。

特徴的なのは、「ヤマト(1974年版)」の冥王星が分厚い大気のある星として描かれている点だろうか。実際にはごく薄い大気、それも彗星のコマのような大気があることがわかっているが、光の点としてしか見えなかった時代の空想との(少なくとも定性的な)符号は面白い。最近、探査機ニューホライズンズの観測によって、冥王星の地表がきわめて地質学的に若いらしいことがわかった。これが(氷の)火山活動によるものだとすると、「ヤマト(1974年版)」で描かれた冥王星の「海」(ただし地下深部の)も、あながち的外れでもなかった、ということになるかもしれない。


■サイエンス「冥王星と巨大衛星シャロン」で使われていた想像図(1990年)
別記事でも紹介した想像図。分光観測により、冥王星は赤っぽい色合いであることがわかってきた。それを踏まえての想像図。カロンの色合いも反映されている。
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■日経サイエンス「最後の未踏地 冥王星への旅」に使われていた想像図(2002年)
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■NASA/JPLSolar System Simulatorで使われていた想像図
ニューホライズンズの前身、「プルートー・エクスプレス」のイメージパースにも使われていた。空想の、と断り書きがあるが、茶色っぽい色合いで、分光観測の成果をあるていど踏まえていると思われる。
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■ニューホライズンズのイメージパースに使われていた想像図 その1
二種類あって、一方は真っ赤な冥王星が描かれている。少し赤っぽく描きすぎではないかと感じていた。というのも、海王星の衛星トリトン(冥王星とよく似ていると言われていた)も、ボイジャー2号の接近観測以前から赤っぽいと言われていたが、ボイジャーが撮影した画像では、むしろオレンジっぽい色合いだったからだ。
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■ニューホライズンズのイメージパースに使われていた想像図 その2
もう一方のパースは、表面の明暗を意識して描かれており、特に黒い領域は複雑な境界線をもつ地域として描かれている。しかし、明暗部の境界部の様子はトリトンとはかなり異なる
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■ウィキペディアで使用されていた想像図
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■参考:地上望遠鏡による、おそらく最良の冥王星とカロンの地表図
※これは想像図ではない
Young,Binzel,and Crane(2001)による冥王星の地表図と、ローウェル天文台のMarc Buie によるカロンの地表図。冥王星は、カロンに面した半球の画像。カロンは全球地図を球体に貼り付けて描画したもの。
結果として、この冥王星画像は非常に実際に近かったと言えると思う。

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そして、

■ニューホライズンズが撮影した冥王星とカロン
※これは想像図ではない
公式サイトに掲載された冥王星とカロンの写真(実際の天体の比率と位置関係になるよう合成したもの)を編集したもの。
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ひとくちに「赤っぽい」と言っても、様々な解釈の想像図があった。実際にニューホライズンズが撮影した冥王星は、赤というよりオレンジがかった色合いだった。ここまでは、遠距離から撮影されたトリトンと似ていたが、これまでに公開されている冥王星の画像は、高解像度なものでも全体にオレンジがかっている点がトリトンと異なる。


■おまけ
MASA Planetary Logにて作成した冥王星画像(別記事参照)。ハッブル宇宙望遠鏡の観測で得られた明暗分布と、ボイジャー2号が撮影した海王星の衛星トリトンの地表画像をもとにしている。
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再現度は、自己採点としては、40点くらいか。

冥王星はトリトンと同じく赤っぽいと言われていた。かつ、望遠鏡観測から明暗の模様があることがわかっていた。このことから、冥王星の明るいところと暗いところは、トリトンのそれらと似たような様相を呈していると仮定た。明るい地域と暗い地域の境界部は、当時の明暗図の分解能では、相当ディティールが失われているはずだったが、トリトンの明るい南極冠と、中緯度の暗い地域のように、ある程度シャープに切り替わっていると仮定した。トリトンの明るい地域と暗い地域は、それぞれ鮮やかな赤ではなかったが、遠方から見たときそれらがブレンドされて赤っぽく観測されると考えた。

結局のところ、これまでに公開された冥王星の画像は、あまりトリトンに似ていない。今年はじめの低解像度のカラー画像では鮮やかなオレンジだったが、最接近直前の高解像度の画像でも、全体が一様にオレンジを帯びているようだ。また、明暗も、明と暗の2階調ではなく、明るい「ハート形」、暗い「クジラ」とおおむね中間調のそれ以外のように、3階調的だった。また、カロンに面した側とそうでない側で地表の様子がかなり異なっていた。暗い地域の特徴は、むしろ土星の衛星イアペトゥスに似ているように思う。

明るい地域と暗い地域の明瞭な境界付けは、うまくいっていたと思う。

色合いについては、まあ仕方がないところだった。明暗の階調については、明暗図を丹念に見ていれば予想できたかもしれない。また、自転が潮汐固定された天体の表面の二面性については、もう少し想像力を働かせるべきだったかもしれない。よく、初めての探査で、「想像もつかなかった」というコメントが出るが、丹念に既存の知識を積み上げていけば、より正確な想像図が作れるのではないかと思う。



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