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zoom RSS 火星の砂嵐の実際 映画「オデッセイ」(The Martian)の参考

<<   作成日時 : 2016/02/18 00:16   >>

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原作「火星の人」では、砂嵐が物語の始まりのきっかけをつくる。また、映画「オデッセイ」では、屋外のシーンでほとんど常につむじ風が描かれている。

■砂嵐の威力の実際

原作および映画では、火星から軌道上の母船ヘルメスに帰還するためのMAV(帰還船)が、砂嵐により傾き、打ち上げられなくなる危機に直面することから始まる。
実際の火星での大気圧は地球の135分の1程度に過ぎず、同じ風速の風でうける風力は、地球の場合の100分の1のオーダーにしかならない。過去の火星探査ローバーの中でも砂嵐で転倒したものはない。こうしたことから、帰還船が傾くほどの砂嵐は、実際には考えにくい。

原作者アンディ・ウィアーもその点は承知していたようで、ウィアーのウェブサイト(http://www.galactanet.com/martian/)にある「stock answers.docx」というファイルには、以下のような問答がある。

Sandstorm Force
The atmosphere of Mars is only about 1/200th the density of Earth’s. It does get 150km/h windstorms, but the inertia from the thin atmosphere is so small it would feel like a gentle breeze. So there’s just no way a storm could do that kind of damage. I knew this at the time I wrote it. I had an alternate beginning worked out where an MAV engine test causes an explosion that leads to all the problems, but it just wasn’t as cool. The Martian is a man-vs-nature story and I wanted nature to get the first punch in.

MAVのエンジントラブルがきっかけとなる代案を用意していたが、「The Martian」を人と火星の自然との闘いの物語にするため、最初の一撃は自然の猛威にしたかったということである。

■火星探査機が見た火星の砂嵐(2016.3.7追記 ※2016.2.11のツイートから再録)

砂嵐といっても、視覚的には大きく分けて2種類ある。ひとつは、火星上の広大な範囲におよぶ砂嵐。もう一つは、砂塵を伴うつむじ風「ダストデビル」である。


火星周回探査機「マーズ・オデッセイ」が上空から捉えた火星の砂嵐の先端部
http://photojournal.jpl.nasa.gov/catalog/PIA11308
※着色してあります。元は白黒です
画像


マーズ・リコネッサンスオービターが捉えた火星南半球の巨大な砂嵐のモザイク画像
http://photojournal.jpl.nasa.gov/catalog/PIA16450
画像


火星探査ローバー「オポティュニティ」が捉えた、砂嵐による視界悪化
http://photojournal.jpl.nasa.gov/catalog/PIA16814
※着色してあります。元は白黒です
画像


【GIF動画】火星探査ローバー「スピリット」が地上で捉えた火星のつむじ風「ダストデビル」
http://photojournal.jpl.nasa.gov/catalog/PIA07253
※着色してあります。元は白黒です
画像


マーズ・リコネッサンスオービターが上空から捉えた火星のつむじ風(ダストデビル)
http://photojournal.jpl.nasa.gov/catalog/PIA15545
画像


マーズ・グローバルサーベイヤーが上空から捉えた火星のつむじ風(ダストデビル)
http://photojournal.jpl.nasa.gov/catalog/PIA05126
※元は白黒です。着色してあります
画像


■パスファインダーは埋まるのか

映画中では、砂に数十センチも埋もれたパスファインダーがワトニーにより発見される。
原作「火星の人」では、半分ほど埋まった状態となっている。パスファインダー着陸地点は洪水の跡であり、砂よりも散乱した礫の方が目立つ様相を呈している。それを考えると、原作の描写の方が正確なのだろう。

パスファインダーの着陸地点のパノラマ写真(再掲)
画像



2006年12月にマーズ・リコネッサンス・オービターが撮影。砂に埋もれてはいない模様。
微地形が色分けされている。
PIA09105: Mars Pathfinder Landing Site and Surroundings
http://photojournal.jpl.nasa.gov/catalog/PIA09105
画像


こちらは、ソ連の火星探査機「マルス3号」の着陸機らしき物体。1972年12月2日に火星に着陸し、直後に通信途絶した。2007年11月と2013年3月に火星周回探査機マーズ・リコネッサンス・オービターが撮影した。これらは、40年以上を経て、衛星軌道から識別可能な程度には砂から露出している。

PIA16920: Could This Be the Mars Soviet 3 Lander?
http://photojournal.jpl.nasa.gov/catalog/PIA16920
画像



■その他(2016.02.20追記)
映画「オデッセイ」では、ここまで見てきた点を含め原作「火星の人」のいくつかの重要なシーンやエピソードが省略されたり改編されたりしています。その辺を非常に丁寧に整理して解説している記事を見つけたので追記しておきます。

「映画『オデッセイ』の分かりにくい場面を解説します」
http://www.jifu-labo.net/2016/02/explain_martian/

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
砂嵐でMAVが危険にならないとストーリーが始まらないのは判りますが、現実にその可能性に4年間さらされるのならマーズダイレクト方式はNASAはとらないでしょう。
別記事でストーリー的に高効率のイオン推進のヘルメスによる短い探査期間とマーズダイレクト方式のMAVの組み合わせを褒めてましたが、現実にアレス計画を進める事を考えるとコストパフォーマンス的にはかなり悪いのではないかと思いますw
原作ファン
2016/04/02 22:28
原作ファンさま
結局、物語冒頭の砂嵐の誇張が過ぎる、というに尽きると思います。これに代わる稀な現象に差し替えられれば解決するのでしょうが、そのような可能性というと隕石の落下くらいしか思いつきません。まあ、本編の出来がよいだけに、冒頭のみ、何か稀な現象におのおの脳内置換して楽しめばよいのではないでしょうか。
現実の火星探査では、砂嵐による転倒を心配する必要はないと思いますが、実際問題として数年間も火星の地表で燃料バルブの密閉を維持するには、とか、燃料の材料となる水素などを運ぶには巨大なタンクが必要になってしまう、など、解決すべき技術的な課題がたくさんあるようです。
MASA(管理者)
2016/04/03 00:35

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