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zoom RSS 映画「エウロパ」(Europa Report)鑑賞後雑感【ネタバレあり】

<<   作成日時 : 2016/10/18 00:54   >>

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木星の衛星エウロパについては、先日、南極域から氷の噴出が起こっているらしいことが報じられた。


News Release Number: STScI-2016-33
NASA's Hubble Spots Possible Water Plumes Erupting on Jupiter's Moon Europa
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このニュースの関連で映画「エウロパ」を知り、レンタルで見た。

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この作品は、木星の衛星エウロパに着陸し、地下の海および生命の存在を調査する、人類初のエウロパ有人探査ミッション「エウロパ1」の顛末を描いた映画である。

映画は正直、あまり期待していなかったが、そのせいもあってか、意外に楽しめた。

明らかに地球から何百万キロも離れているのに管制センターとリアルタイムで会話できてしまうところが気になったが、宇宙船のデザインとか、エウロパへの着陸の様子とか、エウロパ地表で空の一点から動かない木星とか、見どころは多々あったと思う。

また、遭難した調査隊の映像記録という趣向になっているためか、宇宙での映像は基本的に船体や船室内、宇宙服などに取り付けられたカメラからの固定視野になっている。よくある宇宙船と並走するカメラからの遠望などはない。このことが、リアリティの向上に一役かっているように思う。

Yahoo!映画での評価
http://movies.yahoo.co.jp/movie/%E3%82%A8%E3%82%A6%E3%83%AD%E3%83%91/348325/

Wikipedia 英語版
https://en.wikipedia.org/wiki/Europa_Report

HOW REALISTIC IS THE SCI-FI SPACE THRILLER 'EUROPA REPORT'?
映画の設定に助言を行った宇宙生物学者ケヴィン・ハンド氏へのインタビュー
http://www.popsci.com/science/article/2013-08/qampa-how-realistic-em-europa-reportem-sci-fi-space-thriller

監督インタビュー(1)
‘Europa Report’ director explains how he put the science back in science fiction
http://www.digitaltrends.com/gaming/europa-report-director-explains-how-he-put-the-science-back-in-science-fiction/

監督インタビュー(2)
Discussing 'Europa Report' & Sci-Fi with Director Sebastián Cordero
http://www.firstshowing.net/2013/discussing-europa-report-sci-fi-with-director-sebastian-cordero/

映画の劇場公開は2013年8月だが、同年12月にはエウロパの南極から水蒸気の噴出を示唆する観測結果が初めて発表されている。
Hubble Space Telescope Sees Evidence of Water Vapor Venting off Jovian Moon
News Release Number: STScI-2013-55
http://hubblesite.org/newscenter/archive/releases/2013/55/full/


■衛星エウロパについて
PIA00502: Natural and False Color Views of Europa
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木星の4大衛星「ガリレオ衛星」のうちイオに次いで2番目に木星に近く、地球の月よりわずかに小さい。地表は一面氷におおわれており、リニアと呼ばれる長大な線状の模様に縦横に覆われているが、衝突クレーターはほとんど見られない。

地球の月が常に地球に対して「表」側を向けているように、エウロパも常に木星に対して同じ半球を向けている。

自転周期と公転周期はともに3日と約13時間14分。公転軌道の半径は約67万キロメートルで、地球の月の38万キロメートルに比べると倍近いが、公転周期は10分の1しかない。ちなみに、公転軌道半径が月とほぼ同じ42万キロのイオは1日と18時間半で一周してしまう。木星の重力の強大さを実感できる。

ウィキペディア日本語版
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%82%A6%E3%83%AD%E3%83%91_(%E8%A1%9B%E6%98%9F)

同英語版
https://en.wikipedia.org/wiki/Europa_(moon)






■宇宙船のデザイン(2016.10.22追記)
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 先端部に円錐形の着陸・上昇モジュールがついている。これはエウロパへの往復を行うだけでなく、地球-木星間の巡航時に船全体のコントロールセンターにもなっているようだ。アポロ計画の着陸船などは、離陸するときは船体の下半分を発射台として置いてくるが、エウロパ・ワンでは丸ごと帰ってくる。
 その後ろには回転するアームの先端に船室が付いており、見たところ1Gに保たれている。さらに後方には、太陽電池パネルを備えた部分があり、最後尾に船体の半分くらいの長さを占める主エンジンと思しき部分が占めている。

「火星の人(The Martian)」のヘルメス号のヴァシミールのような連続駆動の主エンジンではないようだ。巨大な推進機関と回転する居住区を備えた構造は基本的にヘルメス号(映画版)にも通ずるが、こちらの方が武骨でリアリティがあるように思う。

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 居住区画の回転速度は、計ってみると周期約38秒、約1.6rpmだった。この回転速度だと、船室を1Gに保つには回転軸からの半径は約1400m必要となる。もっと下げてエウロパ表面重力に相当する0.135Gとしても、190mほどにしなければならない。

 劇中の描写から、仮に船の中心軸から船室の底まで20m程度とすると、そこでの遠心力は0.01G程度である。これは土星の衛星エンケラドスの表面重力に近い値である。

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(2016.11.3追記)
 この映画中のエウロパ・ワンも、宇宙船本体は回転せず、居住区画だけが回転するようになっている。こういう可動部のある宇宙船を長期間使うのは、それなりに大変なのではないかと思う。映画「オデッセイ」原作小説「火星の人」(どちらも邦題はThe Martian)の宇宙船ヘルメスは、巡航帰還は船体全体を回転させることになっている。


■木星軌道投入(2016.10.22追記)

 木星に近づいていくと、画面に現れる木星は北を上にして右側が太陽に照らされている。実際の惑星周回探査機でもそうだが、地球より外側の惑星とのランデブーでは、接近する宇宙船の運動は、木の枝に向かって石を投げ上げ、その放物運動の頂点付近で当てるのに似ている。宇宙船は軌道の最高点(遠日点)、速度は最低の点で惑星と会合することになり、惑星が追いついてくるのを待つかたちとなるため、このような見え方となる。

 木星への軌道投入にあたっては、主エンジンを一定時間噴射している。「2010年宇宙の旅」のチエン号やレオーノフ号のように木星大気上層をかすめて速度を落とし、そのまま軌道投入する「エアロ・キャプチャ」は行っていない。

 軌道投入シーンでは、木星が視野の右側を占める。木星の北が上だとすると、木星の自転と逆方向に進入していることになるが、このあとのエウロパとのランデブーも考えると、木星の自転と同方向(したがって衛星群の公転とも同方向)に進入するのが自然ではないかと思う。だとすると、このシーンのみ、木星の南極が画面上方にきていると考えられる。


■降下(2016.10.22追記)

 木星軌道投入のあと、エウロパ・ワンはさらにエウロパを周回する孫衛星軌道に入り、着陸船を切り離す。このとき、船はエウロパの赤道に沿って、西から東に向かって飛行している。

 母船先端部の固定カメラから、眼下で回転するエウロパと、そこに向かって離れていく着陸船が映し出されるが、司令船から切り離された月着陸船が降下していく様子を髣髴とさせる、臨場感あふれるシーンとなっている。また、エウロパの明暗境界線付近で、地表の微細な凹凸が深い陰影を刻む様が息を呑むほど美しい。
※ただし、エウロパの自転速度では、見る間に地形が夜側に消えていくことはないはずだ。

 天文シミュレーターなどで、「地表画像が貼り付けられた球体」としてのエウロパばかり見ていると、この凹凸感にはよけいにはっとさせられる(実際にこれほどの凹凸があるかどうかは別だが)。

 着陸船切り離し直後のショットで眼下に見えるのは木星の反対側に位置するマスクメロンのような地形で、アルガドネル・リージョと呼ばれる地域が見て取れる。

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■着陸地点

ミッションでの着陸地点は、エウロパの赤道付近、経度270°付近にある「コナマラ・カオス」という場所である。ここは、まるで地球上の南極海あたりのテーブル氷山の群れを思わせる「Ice raft」(氷の筏)と呼ばれる地形が見つかり一躍有名になった。

木星探査機ガリレオが撮影したコナマラ・カオス
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PIA01127: Europa - Ice Rafting View
http://photojournal.jpl.nasa.gov/catalog/PIA01127

PIA01296: Europa "Ice Rafts" in Local and Color Context
http://photojournal.jpl.nasa.gov/catalog/PIA01296

PIA03002: Blocks in the Europan Crust Provide More Evidence of Subterranean Ocean
http://photojournal.jpl.nasa.gov/catalog/PIA03002


エウロパの地図は、木星側半球の中心経度を0°としている。コナマラ・カオスがある経度270°はそこから西回りに270°、あるいは東回りに90°回ったあたりにある。このあたりは、エウロパが木星を公転するときに常に後方にあるので、ここを中心とした半球を「追尾半球」(trailing hemisphere)ということがある。

先行半球と追尾半球 Wikipedia英語版
https://en.wikipedia.org/wiki/Poles_of_astronomical_bodies#Near.2C_far.2C_leading_and_trailing_poles

USGS(アメリカ地質調査所)によるエウロパの地図
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この地図では西経180°が真ん中になっている。地図の左半分が追尾半球で、コナマラ・カオスは、左半分の真ん中あたりだ。

ここに立つと、木星はいつも西の地平線上にあって動かない(満ち欠けはする)。なお、木星側半球の中心に立つと、木星は真上から動かないことになる。

コナマラ・カオスからの木星の見え方を、天文シミュレーター「Mitaka++」で再現し、劇中のスクリーンショットと比較してみた。映画の方はやや傾きが大きいように見えるが、わりと忠実に再現されていることがわかる。

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■放射線
劇中でもエウロパ地表の放射線について言及があるが、これは有人探査をする上で大きな障害になる。これは、エウロパの軌道が木星の放射線帯(地球のヴァン・アレン帯に相当)の中をとおっているためである。

ウィキペディア日本語版「外部太陽系の植民」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%96%E9%83%A8%E5%A4%AA%E9%99%BD%E7%B3%BB%E3%81%AE%E6%A4%8D%E6%B0%91#.E3.82.A8.E3.82.A6.E3.83.AD.E3.83.91

Wikipedia英語版 外惑星への植民〜エウロパ(木星放射線帯の図あり)
https://en.wikipedia.org/wiki/Colonization_of_the_outer_Solar_System#Europa

Wikipedia英語版 エウロパへの植民
https://en.wikipedia.org/wiki/Colonization_of_Europa

Wikipedia英語版 木星の磁気圏(Magnetosphere of Jupiter)
https://en.wikipedia.org/wiki/Magnetosphere_of_Jupiter

これらによるとエウロパ地表での放射線量は1日540レム(5.4シーベルト)だが、「4Sv (シーベルト) で50%、7Svで99%の人が死亡すると言われている」とのことなので、厳重な放射線防護なしには着陸どころかエウロパの公転軌道に近づくことすらできそうもない。

■実際の探査計画
有人エウロパ探査はいまのところ、ほとんど夢物語だが、エウロパを主なターゲットとした探査計画はNASAで進められている。

Mission to Europa
http://www.nasa.gov/europa



2016.10.22 各項目の画像および「宇宙船」などの項を追加
2016.11.03 エウロパワン回転数と人工重力の関係グラフ追加



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