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zoom RSS 読後雑感〜「死都日本」(石黒耀)

<<   作成日時 : 2011/12/18 23:34   >>

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★物語の内容に触れている部分があります。

 圧巻の一言だった。

 とにかく描写の密度が高い。目次から解説まで631ページのうち、545ページが霧島の破局的噴火の最初の24時間(20XX年6月18日から19日)、うち117ページが最初の水蒸気爆発から、全方位火砕流に九州南半分が飲み込まれるまでの約1時間に費やされている。見てきたような、とはまさに本書のためにあるようで、九州の火山地形と、全国規模の火山灰層にのみ痕跡を残している有史以前の破局的噴火が現代日本に起きたらどうなるか、膨大な資料を引きながら描ききっている。作中の破局的噴火は、さらに東海・南海地震、富士山噴火を誘発することが示唆され、東海地震の最初の揺れを捉えるところで終わる。解説では、「日本沈没」以来の災害小説として永く記憶されるだろうとしているが、こちらは有史以前とはいえ実在の現象をあつかっているだけに恐ろしい。

 東日本大震災を経た視点で見ると、災害想定の表現としても興味深い。本書のテーマである国内のカルデラ火山の破局的噴火について、事象の規模や内容を地質学的に再現した書籍はあったかもしれないが、生身の人間の体験として描いた小説は無かったのではないだろうか。災害の圧倒的な恐怖を味わうと、まさしく自分の問題として、何とかしなければという思いに駆られる。稀有な災害の備えの動機付けとしては、これほど効果的な手段はないように思われる。

 一方、これほどの小説の作者と言えども、というか、リアルにこだわればこだわるほど、資料が乏しい事象の描写については、資料の限界に拘束されるのだな、とも感じた。作中では火砕流の被害想定域にある川内原発は、噴火を予見した政府により本来の目的を伏せられたまま燃料を事前に抜き取られ、放射性廃棄物の拡散をまぬかれる。浜岡原発も東海地震判定会の判断を受けて早々に停止され、物語では描かれていないが、最悪の被害はまぬかれることが示唆される。現実の東日本大震災では、原発の防災は後手に回り、福島第一原発事故は地震そのものではなくむしろ津波によって引き起こされた。川内原発の対応は、作者の良心とも言えるような気がするが、現実はそれを見事に裏切っていて暗い気分になる。津波被害にしても、東北地方に関して言えば貞観地震の意味づけが浸透する以前であれば、小説として再現できたかどうか分からないし、できたとしても所詮小説の世界だからと片付けられていたかもしれない。

 噴火と平行して描かれる日本政府の対応、特に菅原首相のリーダーシップは印象的だった。現実にはこんなにうまくいくとは思えないが、東日本大震災を経験した今となっては、有史以前の現象であっても、何らかの備えはしておかなければならないのではないかと考えさせられる。

■関連記事
日経サイエンス  2006年9月号
スーパーボルケーノ 超巨大噴火の脅威
I. N. ビンデマン
http://www.nikkei-science.com/page/magazine/0609/volcano.html


■噴火の起点となる霧島近辺の地図↓


■「画像でたどる死都日本」
http://kazan-net.jp/shitoWWW/index.html
作中に登場する場所や、モデルとなった施設などを写真で紹介している。カシミール3Dを用いた噴火後の地形の想像図も。物語のイメージが膨らむ。

■早川由紀夫さんの書評など
科学的な観点からの解説があり、小説で誇張されている点や防災上の留意点などが読み取れ面白い。
○死都日本の書評
 http://www.edu.gunma-u.ac.jp/~hayakawa/edu/hon/sitonihon2.html
○現代都市を脅かすカルデラ破局噴火のリスク評価
 http://www.edu.gunma-u.ac.jp/~hayakawa/bosai/hakyoku/hakyoku.htm
○早川由紀夫研究室
 http://www.edu.gunma-u.ac.jp/~hayakawa/edu/


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