MASA Planetary Log

アクセスカウンタ

zoom RSS 「アルマス」〜表面がダイヤモンドで覆われた星(映画「ドラえもん のび太の宇宙英雄記)

<<   作成日時 : 2015/03/07 19:50   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 2 / トラックバック 0 / コメント 2

【閲覧注意】物語の内容に触れている部分があります

 せっかく宇宙が舞台なのに藤子・F・不二雄らしいSF的な見応えが少ないのが残念・・・というのが率直な感想でしたが、子供たちは喜んで観ていたようなので、そこはいいとして・・・そんな中でも興味を惹かれる設定もありました。

 物語の舞台となる「ポックル星」は銀河円盤の縁の方に位置する惑星で、重力や大気など、環境は地球とよく似ています。このポックル星を照らす「太陽」に相当する星が「アルマス」で、劇中では表面はダイヤモンド、内部がグラファイト(黒鉛)でできているとされています。アルマスは、近隣の恒星の光を反射して、ポックル星を照らしているとのことです。

 ダイヤモンドなど炭素でできた星というと、2012年10月に、かに座55番星をめぐる惑星(かに座55番星e)がダイヤモンドとグラファイトでできているかもしれないとの報道がありました。アルマスの設定は、こうしたニュースを踏まえているのかもしれません。


「かに座55番星」ウィキペディア日本語版
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8B%E3%81%AB%E5%BA%A755%E7%95%AA%E6%98%9F

かに座55番星の位置
かに座55番星(ρ1)の位置(ウィキペディアより)





「かに座55番星e」ウィキペディア日本語版
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8B%E3%81%AB%E5%BA%A755%E7%95%AA%E6%98%9Fe
かに座55番星eと地球の比較
かに座55番星eと地球の比較(ウィキペディアより)


「なぜ天文学者はかに座にダイヤモンドの星があると考えたのか 」
バンショ和ゲゴヨウ〜注目論文ツイート中の人がつづる自然科学の解説拠点
http://banshowagegoyo.hatenablog.com/entry/2014/03/05/060914

「ダイヤモンドの惑星〜日経サイエンス2013年3月号より」
http://www.nikkei-science.com/?p=32890


 かに座55番星は、地球から40光年離れており、質量、表面温度など太陽と似た恒星ですが、炭素を豊富に含むという点が異なります。そして、炭素を豊富に含む恒星は、炭素を豊富に含む材料から作られたはずで、そうした恒星を公転する惑星も、やはり炭素を豊富に含むのではないかと予想されていました。

 そもそも、地球に似た(つまり炭素に乏しく水、酸素、ケイ素に富んだ)ポックル星と、炭素が豊富なアルマスが同じ星系に存在するのは難しいかもしれません。

(2015.03.10追記)
 銀河系全体でみると、銀河中心に近いほうが重元素を多く含む恒星ができやすいとのことです。作中のポックル星は銀河円盤の端の方に位置していますから、組成の点ではこの位置では少数派でありそうです。



「炭素惑星」ウィキペディア日本語版
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%82%AD%E7%B4%A0%E6%83%91%E6%98%9F

「標準は"炭素惑星"?〜日経サイエンス2010年3月号より」
http://www.nikkei-science.com/?p=16349


 かに座55番星eは、軌道長半径0.015天文単位(約230万キロ)という近距離を約18時間で公転しており、表面温度は摂氏2000度前後と推定されています。なお、太陽系で最も太陽に近い水星の軌道長半径は約5800万キロ、表面温度は昼側で約430度です。

 劇中のアルマスは、表面がダイヤモンド、内部がグラファイトでできているとのことでしたが、かに座55番星eは地表がグラファイトで、中心に向かってダイヤモンド、岩石の層があり、鉄の核をもつと想像されています。


「YaleNews | Nearby super-Earth likely a diamond planet」かに座55番星eの内部構造図など
http://news.yale.edu/2012/10/11/nearby-super-earth-likely-diamond-planet

かに座55番星eの内部構造
かに座55番星eの内部構造の例(水がほぼ存在しないケース)(YaleNewsより)




 惑星とダイヤモンド、というと、真っ先に思い浮かんだのはアーサー・C・クラークの「2061年宇宙の旅」で、木星内部で生成されていたダイヤモンドの塊が、前作「2010年宇宙の旅」の中で行った爆発で吹き飛ばされ、その一つが衛星エウロパ上の山として発見されます。


「2061年宇宙の旅」ウィキペディア日本語版
http://ja.wikipedia.org/wiki/2061%E5%B9%B4%E5%AE%87%E5%AE%99%E3%81%AE%E6%97%85



 このアイディアのもとは、天王星や海王星の内部にダイヤモンドが存在するのではないかとの説で、天王星や海王星で起こることなら、より大きな木星で起こってもいいだろうと、クラークが転用したとのことです。

 天王星や海王星のダイヤモンドについては、実際に実験で生成されたと2010年1月に報道されています。


「Diamond Oceans Possible on Uranus, Neptune」
http://news.discovery.com/space/alien-life-exoplanets/diamond-oceans-jupiter-uranus.htm

「天王星」ウィキペディア日本語版
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A9%E7%8E%8B%E6%98%9F%E5%9E%8B%E6%83%91%E6%98%9F


また、2013年10月に、観測データからの計算により、土星や木星の中心部にもダイヤモンドが存在する可能性があるとの報道があり、「2061年」中のエピソードがより現実に近づいた感じです。


「CNN.co.jp : ダイヤが土星に1000万トン? ガス惑星に「埋蔵」か」
http://www.cnn.co.jp/fringe/35038340.html

「Diamond drizzle forecast for Saturn and Jupiter」NATURE NEWS
http://www.nature.com/news/diamond-drizzle-forecast-for-saturn-and-jupiter-1.13925

「Diamonds on Jupiter and Saturn」ウィキペディア英語版
http://en.wikipedia.org/wiki/Diamonds_on_Jupiter_and_Saturn


 アルマスは、ポックル星の太陽と言いつつ、実際には、近くにある恒星の光を反射してポックル星を照らしているとのことで、恒星ではなく惑星の類です。

 惑星(というか、恒星の反射光)で照らされる、というと、ラリィ・ニーヴンの「無常の月」が思い浮かびます。これは、夜のアメリカにいた主人公が、月の異常な明るさから、太陽の異常増光に気付くという話です。

 月の反射能(アルベド)は0.07、つまり入射した太陽光の7%程度を反射します。また、満月の明るさは太陽の50万分の1程度です。仮に月の反射能が1、つまり太陽の光をすべて反射したとしても現在の明るさの14倍ですから、月の反射だけで地球の環境を直射日光下と同じに保とうとしたら、月に入射する太陽光を3万6000倍にする必要があるということでしょうか(それで月が溶けてしまわなければの話)。

 アルマスの光が反射光である以上、ポックル星の環境が地球と同程度に保たれるためには、アルマス-ポックル星系を照らす「太陽」の放射は、地球に対する太陽の放射の何倍(何桁)も強くなければならず、そのためには「太陽」によほど近いか「太陽」が地球の太陽に比べてかなり熱い星でなければなりません。

 一方、劇中ではポックル星は、ほぼアルマスの光のみで照らされているようなので、そのアルマスを照らしている恒星の光は、ポックル星に対しては何かで遮蔽されていなければなりません。前述のように「太陽」に近くなければならないとすると、遮蔽はなおさら難しくなり・・・・・・など、いろいろ無理がある設定ではあります。

(2015.3.9追記)
 話を単純にするために、ポックル星を地球、アルマスを月、ポックル星-アルマス系を照らす恒星を太陽としてみます。劇中ではポックル星はアルマスを公転してると思われますが、とりあえずの仮定として。

 月の実視等級を-12.7等、太陽の実視等級を-26.7等とすると、月の明るさは太陽の約40万分の1です。月のボンドアルベド(エネルギー反射能)が0.11に対し、アルマスでは金星並みの0.9だと仮定すると、明るさは月の約9倍となり、太陽の約4万9000分の1となります。

 アルマスの明るさが太陽と同じ(4万9000倍)になるには、ポックル星-アルマス系から太陽(表面)までの距離が√(4万9000)分の1(220分の1)である必要があります。このときの距離は太陽表面から約68万キロしかありません。ポックル星とアルマスの距離が地球-月間と同じ約38万キロしかないとしても安定して公転できないでしょうし、ポックル星からみた空の半分は太陽に覆われていますから、とうてい遮蔽はできないでしょう。

 次に、太陽までの距離は変えずに、太陽を明るくする場合を考えます。月と太陽の実視等級には14等級の差がありましたが、アルマスが月の9倍明るいとすると、その差は約12等級なので、太陽の等級が12等あがれば、アルマスの明るさが現実の太陽と同じになりそうです。

 理科年表の恒星の物理諸量の表を見ると、G0型の輻射等級は+4.3等(実視+4.4等、輻射補正-0.1等)、B0型が-6.8等(-4.0等、-2.8等)で、差は11.1等となります。太陽のスペクトル型はG2型ですから、ポックル星-アルマス系を照らす恒星をB0型近辺と仮定すればいいようです。(実視等級と輻射等級の議論が混ざってますが・・・)

画像


 B0型の表面温度は2万9000K、質量は15倍、半径はG0型の8倍程度です。仮に太陽の8倍なら、500万キロ程度なので、とりあえず飲み込まれる心配はなさそうですが、太陽の8倍の視直径の天体を隠すには、たとえば「太陽」側のラグランジュ点(L1点)に遮蔽物を置く必要があります。恒星の質量が太陽の15倍であれば、L1点までの距離は約60万キロ(太陽までの距離の0.004倍)となります。

 半径が太陽の8倍の恒星をL1点の円形の物体で隠すには、その半径は約2万3000キロ(地球の約3.5倍)以上である必要があります。火星のテラフォーミングの方法の一つとして、L1点に直径1万キロの反射鏡を配置するアイディアがありますが、それに勝るとも劣らない仕掛けです。

 劇中の設定に近づけるために、ポックル星がアルマスを公転している、とすると、「太陽」はより遠くにある必要があり、またポックル星がアルマスを公転する軌道全部にわたって「太陽」を遮蔽する必要があり、さらに条件は難しくなりそうです。

 ※追記部分の数値の出典はおもにウィキペディア日本語版から。


2061年宇宙の旅 [ ア-サ-・チャ-ルズ・クラ-ク ]
楽天ブックス
ハヤカワ文庫 アーサー・チャールズ・クラーク 山高昭 早川書房発行年月:1995年03月15日 予約

2010年宇宙の旅新版 [ アーサー・チャールズ・クラーク ]
楽天ブックス
ハヤカワ文庫 アーサー・チャールズ・クラーク 伊藤典夫 早川書房発行年月:2009年11月25日 予

無常の月 (ハヤカワ文庫 SF 327)
早川書房
ラリイ・ニーヴン
amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 無常の月 (ハヤカワ文庫 SF 327) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



映画ドラえもん のび太の宇宙英雄記 【Blu-ray】 [ 水田わさび ]
楽天ブックス
水田わさび 大原めぐみ かかずゆみ 大杉宜弘 ※本商品はBluーrayDisc Videoになります

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 2
なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは。
ドラえもんは見てませんが、ここに書かれている情報だけから推測すると……
ポックル星から見てアルマス星の方向の反対側に元の光源があるんでしょうね。
でも、ポックル星からは元の光源が見えないとなると、光源とポックル星の間に濃密な星間物質が存在してて光源が見えないのでしょう。
んで、その星間物質はアルマス星からの見かけの大きさが小さくなって、縁から漏れた光を反射していると考えると辻褄があいます。
んで、その光源からの光は星間物質の重力レンズ効果か何かで増幅されてて、ポックル星に直接照射するとキツすぎるんでしょう。
でも、そうするとポックル星はアルマス星の周りを公転しでないはずなのですが、星間物質とアルマス星のラグランジュ点にポックル星が存在しているのかも知れません。
こうなる確率は極めて低いんですけどね。
RIBON-Y
URL
2015/03/08 21:20
RIBON-Yさま
考察ありがとうございます。真面目に考えるとありえないセッティングなんですが、制約の中でああでもないこうでもないと考えるのはSFならではの楽しみですよね!
初稿書いた後につらつらと考えたことなどそのうち追記します。
MASA(管理者)
2015/03/09 00:41

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
「アルマス」〜表面がダイヤモンドで覆われた星(映画「ドラえもん のび太の宇宙英雄記) MASA Planetary Log/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる